会社設立における現物出資
「現物出資」という言葉を耳にされたことはありますか?
通常、会社を設立するためには「資本金」という名のお金が必要です。
この「資本金」というもの、実はお金ではなく「物」でも認められます。
ただし、物なら何でもよいわけではありません。簡単に言いますと金銭的な価値のある「財産」となるような物です。
例えば、建物、土地、自動車、株券、パソコンなどです。
仮に、自動車100万円とパソコン10万円を現物出資すると、その会社の資本金は110万円ということになります。
ちなみに設立だけではなく、増資をする方法としても認められています。
お金の代わりに物で設立する、この現物出資という方法には、メリットとデメリットがあります。
メリット① お金を使わず資本金を多く見せることができる。
現在では、資本金は1円あれば会社が設立できますので、設立自体が目的の方にはあまり利用頻度の高い制度とはいえませんが、資本金の額で会社の信用度の大小を判断されるケースもありますし、また、各種行政の許認可を受けるために資本金を多くしたいなどのご要望があれば、この現物出資という方法を検討する価値はあるかもしれません。
メリット② 出資した物の金額を会社の経費にできる。
出資した物にもよりますが、その物は、いずれ会社で使用されることになり、したがって、事業に必要な経費という取扱いになります。建物(事務所)、自動車、パソコンなどはその筆頭です。
デメリット① 手続きが増えることがある。
お金で設立する場合より、手間と時間がかかる可能性が出てきます。
例えば、定款に記載しなければなりません。どういった物を出資するのか記載する必要があります。
現物出資をする目的物の価格が500万円を超えるときは裁判所が選任した検査役の調査が必要になります。
但し,いずれかに該当するときは検査役の調査は不要となります。(会社法33条10項各号)
- 現物出資および財産引き受けの目的財産の定款記載の価格の総額が500万円を超えない場合
- 市場価格のある有価証券であって,定款記載の価格が市場価格を超えない場合
- 現物出資が相当であることについて弁護士,税理士等の証明を受けた場合(不動産を現物出資するときは不動産鑑定士の鑑定評価が必要となります)
上記のように500万円を超える現物出資であっても当事務所において会社設立手続きをする事ができますので,お気軽にご相談ください。
現物出資した物は、個人から会社へ所有権が移転することになります。名義変更や所有権の移転登記が必要になる場合があり、手間も費用もかかります。
デメリット② 税金が発生する。
不動産を現物出資すると、出資者と会社の両方に税金が課税されます。
出資者の方には、その物を会社に売った場合と同じような取扱いがなされます。
所得税が生じる可能性がありますので、確定申告をする必要が出てきます。
会社にかかる税金としては、出資した物が、たとえば建物や土地の場合、不動産取得税が課されます。
固定資産税、自動車税は個人に発生していたものが、会社に発生してくることになります。